Yellow Submarine リミックスされて生まれ変わった15曲を収録した「イエローサブマリン・ソングトラック」の試聴会に行って来ました。そこで聴いた素晴しい音をお伝えしましょう。

 
The New CD
YELLOW SUBMARINE SONGTRACK
 今回のアルバムは69年のオリジナル盤とは違って、収録曲15曲全てがビートルズナンバーです。ビートルズ中期の「ベスト盤」的な内容と言っていいでしょう。

 曲は全てアビーロード・スタジオのエンジニア、ピーター・コビンによってリミックスされ、リマスターされています。全体的に、90年代の新しい音にするんではなく、いかに元の楽器や声を一番いい音で聴かせるか、ということに焦点を絞ったリミックスで、60年代当時にスタジオで鳴っていた音を再現したような音、という印象を持ちました。「もとの音に戻した」と言ったらいいんでしょうか、ボーカルも楽器も全ての音がつややかになって、もともと持っている音のままで存在感たっぷりに目の前で鳴っている、そんなサウンドです。特にボーカルの質感には感動しました。この辺にピーターの音に対する「良心」を感じます。

 ダイナミック・レンジの非常に広いサウンドを聴いて、オリジナル盤の「中域に固まったような音がビートルズの味なんだ」という意見もありそうですが、今回のリミックス盤は、音に改めて命を吹き込んだとも言える素晴らしい仕上がりです。改めてリアルタイムで出会い直したとも言えるでしょう。
 

ピーター・コビン

 オーストラリア出身のエンジニア。1995年以降アビーロードのシニア・レコーディング・エンジニアとして活躍。ロック、ポップ、ジャズ、映画、オーケストラなどあらゆる音楽制作のスペシャリスト。
 これまでにポール・マッカートニーの「Beautiful Night」のオーケストラの録音、マーク・ノップラーの「天国への扉」のレコーディングの他、ジャネット・ジャクソン、インコグニートなどの音を手掛けている。ジョージ・マーティンが引退してしまっため、リミックスの音に対してビートルズも若干の不安を感じていたが、仕上がった音を聴いてビートルズも感動し、これならリリースしてもOKと言ったという。


 
1. Yellow Submarine
リンゴのボーカルのパワーが増しました。ギターのコードストロークもピックの動きまで見えるようです。音が非常に立体的になって、サウンド・エフェクトはくっきりとしながら臨場感たっぷり。まるで潜水艦の中にいるようです。
2. Hey Bulldog
イントロのピアノの重厚さ! ドラムとベースのリズム隊の存在感! ジョンのボーカルも太くなった印象です。
3. Eleanor Rigby
ポールのボーカルがセンターに配置され前に出てきます。音のダイナミック・レンジも非常に広くなりました。ストリングスが3方向から聴こえてくる感じで、ステレオ感、音圧感が増しています。
4. Love You To
クリアに響くシタールの音。まるでそこで鳴っているようです。リズムが入った瞬間のドーンという感じ、迫力あります。
5. All Together Now
冒頭のギターのカッティングのクリアさ。ポールのボーカルの艶。この歌を歌っているスタジオの中にいるような気分になります。
6. Lucy In The Sky With Diamonds
ジョンのボーカルが全然ちがう!   といってもいい位に存在感のある声に。ベースの重厚感も特筆ものです。ドラムもシャープかつ重みのある音。サビの「Lucy in the sky〜」に行く前のダン・ダン・ダンというフロアタムの音がお腹に響いてきました。
7. Think For Yourself
出だしのギターの音がインパクトあります。ひとつひとつの音がハッキリと聴こえ、立体感のあるノリのいい音になりました。ハーモニーのバランスも良くなったかも。
8. SGT Pepper's Lonely Hearts Club Band
ポールのボーカルがセンターに置かれ、くっきりと力強くなりました。拍手や歓声などのサウンドエフェクトもステレオ感があり、まるで本当のライブを聴いているような気分に。臨場感あります。
9. With A Little Help From My Friends
SGTからのメドレーのまま収録。リンゴのボーカルがすっきりとしました。スネアの音に力があります。
10. Baby You're A Rich Man
メリハリの効いた力強い音になってサイケな雰囲気もアップしています。サビはサラウンド効果があるように感じました。
11. Only A Northern Song
疑似ステレオがリアル・ステレオに。イントロのキーボードの空気感がいい。ボーカルはオリジナルミックスと比較にならない位にクリア。まるで別の曲のような仕上がりです。
12. All You Need Is Love
イントロの管楽器の音が空気を震わせて迫ってきます。演奏にも広がりが出ました。ジョンの声がすばらしい!  耳もとで歌っているような気分になるうれしい1曲です。
13. When I'm Sixty-four
ポールのボーカルがクリアに。リードボーカルとバック・コーラスが左右に別れているように聴こえました。クラリネットの音はまるでそこで吹いているようです。
14. Nowhere Man
ボーカルのキンキンした感じがまったくありません。ジョンのボーカルとポールとジョージのコーラスが別の位置から聴こえてくるような感じ。J-160Eとストラトの音もいい。
15. It's All Too Much
イントロのギターのフィードバック、そのあとのキーボード、リズムが入ったあとのビート。全てが空気をとどろかせます。最近の音楽と聴き比べても全く遜色のないサウンドに生まれ変わりました。

 
 
 
 全体的にボーカルの素晴らしい質感と低音の響きが印象に残りました。特にボーカルは本当に目の前で歌っているような仕上がりで、息遣いまで感じられ、声そのものに聴き惚れてしまう位です。

 改めて、エンジニアのピーター・コビンの元の音をさりげなく最大限に引き出す姿勢、なによりも「声」の質感を大事にしたリミックス作業に拍手を送りたいと思います。
 
 

 1999年9月13日、Yellow Submarine SongtrackのCDがリリース。
Yellow Submarineの新しい旅が始まります。


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